林檎物語

林檎物語 | 2021.12.02 Thu
【佐伯農園】Issue01〜自分を信じる農業〜

食卓を彩る、りんご。ひとかじりすれば、甘酸っぱくて甘い、ジューシーなおいしさが、口いっぱいに広がります。そんな、おいしさを生み出しているのは、ほかならぬ「りんご農家さん」。そんな農家さんの思いや、農業に対する哲学に、耳を傾けてみませんか?

りんごを愛して奮闘する、りんご農家さんのインタビューをお伝えしていきます。

きっと、りんごの見え方や味わいが、昨日とは変わるはず。

 

今回ご紹介する農家さんは、長野県北部の山ノ内町で「佐伯農園」を運営する佐伯幸彦(さえきゆきひこ)さんです。自分の名前で商売をする個人事業主に憧れて、2018年からりんご農家として農園に立つことを決めました。

 

「自分の裁量で、いろんなことができる農業がおもしろい」と佐伯さん。
Issue01では佐伯さんの「自分を信じる農業」に迫ります。


すずなりの、りんご

佐伯さんの農園は、斜面をぐんぐん上がった山の中腹に開かれた、段々畑にあります。ほかの農園に比べると、木にはたくさんのりんごが付いていることが分かります。

一般的には、摘果して樹になるりんごを少なくし、栄養を集中させてりんごを大きく育てることが多いのですが、佐伯さんの農園では摘果を積極的に行っていません。全体を見渡してみると、小玉が目立ちます。

「小玉の方がおいしいと思うんです。見た目は立派な大きさではないけど、硬くて歯応えがあって、味も濃い気がしますね。だからたくさん成らせています。」

ほかにも、佐伯さんこだわりの栽培方法があるのだそう。例えば、畑の土には除草剤を使わず雑草には草刈りで対応します。さらに肥料の代わりに酵素を土にまくことで、土の中にいる微生物の働きを促進させて、土質を向上させています。

「栽培過程で味見もするんですが、確実に味が違うと思いますね。見えないほど小さい微生物たちが、いい仕事をしてくれているんだと思います」

木に関わる仕事が心地よい

富山県に生まれ、高校を卒業してからは、冬季の休みがとれる造園業や林業に携わり、スノーボードを楽しむ生活を送ります。30歳手前になり、将来どんな生活をしていきたいかを本気で考えるようになりました。
「今まで雇用されていましたが、独立して個人事業主になりたいと思いました。そこで農業はどうだろうかと考えたんです。冬によく遊びに来ていた地域に近くて友人が住んでいる、山ノ内町に来ました。」

山ノ内町で食べたりんごがとてもおいしかったこと、以前に従事していた木を扱う造園業も好きだったことから「木に関わる仕事が心地よい」と感じてりんご農家を目指しました。

しかしこちらに来たものの、なかなか就農はできませんでした。新規就農者向けの研修や補助制度に登録するため、農業を勉強する研修先となる里親農家を探しましたが、当時は里親農家の登録者が山ノ内町にいなかったのです。

「山ノ内町のりんごは、とってもおいしいし、病気にもなりにくいと思います。この地域で里親研修先になってもらえる人を自分で探しました。農家さんを紹介してもらって、りんごの手伝いへ出向き、半年ほど手伝ったところで、里親制度に登録して欲しいと、その農家さんに直談判したんです。本当にお世話になりました」

自分の手で切り開いた農家への道。2年間の研修を経て、2018年に佐伯農園を立ち上げました。

自分で決めていく、推し進める農業

佐伯さんにとって、りんご農家はまさに”百姓” とのこと。百姓は、一時期蔑称に当たるということで、あまり使われなくなりましたが、農業に従事する人々を表します。日本ではその昔、名字は職業を表すもの。つまり百姓は、100の仕事に従事する人という意味も含んでいます。

佐伯さんは、りんごを育てるだけでなく、ひとりでいろんな仕事をしています。農機具を収納する小屋や、受粉を担う蜂の巣箱を作る大工仕事、そしてりんごを販売する営業、接客などの業務です。

「農家になるまでは、雇用されて働いてきましたが、3年以上続かなかったんです。しかし今、自分の裁量で動ける農家という仕事を楽しめています。やることが多すぎて、全然休めていないんですけど、心穏やかに過ごせているんです。みんながやらないような栽培方法をしているので、失敗したらどうしようって不安なことも、もちろんありますよ。しかし自分を信じて、その通りにできるのが、農家の醍醐味ですね」

佐伯さん手作りの蜂の巣箱

 

Issue02につづく

 

▼佐伯さんのりんごは、こちらから購入いただけます🍎
https://store.shopping.yahoo.co.jp/cjnaganofarm/100-1.html

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