食卓を彩る、りんご。ひとかじりすれば、甘酸っぱくて甘い、ジューシーなおいしさが、口いっぱいに広がります。そんな、おいしさを生み出しているのは、ほかならぬ「りんご農家さん」。そんな農家さんの思いや、農業に対する哲学に、耳を傾けてみませんか?
りんごを愛して奮闘する、りんご農家さんのインタビューをお伝えしていきます。
きっと、りんごの見え方や味わいが、昨日とは変わるはず。
今回ご紹介する農家さんは、長野県北部の山ノ内町で「佐伯農園」を運営する佐伯幸彦(さえきゆきひこ)さんです。自分の名前で商売をする個人事業主に憧れて、2018年からりんご農家として畑に立つことを決めました。
「自分の裁量で、いろんなことができる農業がおもしろい」と佐伯さん。
Issue03では佐伯さんの「りんごを取り囲む願い事」に迫ります。
家族の想いが詰まったりんごチップス。
佐伯農園には、りんごのほかにも人気商品があります。地域の道の駅や、お団子屋さん、旅館などいろんな場所で販売される「そのままりんごチップス」です。
佐伯さんのりんごを乾燥させて、パリッと歯応えの良いチップスにした商品は、佐伯さんの奥様の、りんごへの想いが原点です。
「奥さんに作業を手伝ってもらった時のこと。傷が付いて生食用としては出荷できないりんごをジュースにするため、一緒に業者へ持っていきました。
りんごが金網にガラガラ放り込まれる光景を見ていた奥さんが『リンゴがかわいそう』と泣き出したんです。その日は口も聞いてもらえませんでした。」
後日、奥様に涙の理由を詳しく聞いてみた佐伯さん。生食用として出荷できないりんごも、ほかのりんごと同様に大切に扱いたいという気持ちから、涙があふれてしまったようです。
「私の作業をいつも身近で見守ってくれているパートナーです。『幸彦くんがりんごへ費やした時間も想いも、雑に扱われた気がした』『もったいない、ひとつも無駄にしたくない』『幸彦くんがどんな想いで大事に作り上げてきたのか知っているので、これでは労力が報われないような気がする』『もっと大事にりんごを扱いたい』という想いを打ち明けてくれました。」
その後、奥様に少しずつ確認しながら、りんごの行き先を決めていきました。
「納得できる加工方法を『これならいい? あれはどう?』って、ひとつずつ提案していきました。そこで決定したのが、りんごを無駄なく丸ごと使ったチップスです。」
現在は、奥様が「そのままりんごチップス」の営業担当なのだそう。袋には、山ノ内町の隣にある、木島平村の伝統工芸品「内山紙」をパッケージラベルに使用しています。内山紙は一枚一枚、職人によって手すきで作られた和紙で、あたたかみのある触り心地です。
そしてラベルにあるスタンプは、佐伯さんの髭のある笑顔をモチーフにしたキャラクター ”ひげりんご”。消しゴムはんこで押されていて、こちらも内山紙の職人さんが手作りしました。
「パッケージを手に取っていただいたお客さんに、ついつい笑顔が移ってしまうような和やかな親近感を感じていただければ嬉しいです。」
現在お住まいになっているのは、りんご農園から離れた地域。人口は減り、農家もほとんどいない地区とのことですが、多くの住民が無農薬で野菜や米、蕎麦などを作っているのだそう。
「農作物の物々交換や、地域の交流もたくさんあるんです。こんな素敵な地域、なかなか無いので、残したいんですよね。無くなったら、もったいない。本当は農園の近くに住んだ方が便利だけど、この地域に住む方が居心地がいい。」
耕作の見込みがない農地である”遊休農地”がたくさんあることが、地域の課題になっているのだそう。遊休農地は、雑草や雑木で荒れたり、病害虫が発生したりなど問題が発生する可能性が高い場所です。
佐伯さんは、課題を少しずつ解決したいと、家の近くに土地を購入し、ワイン用のぶどうであるシャルドネを植えました。しかし、今年はぶどうの実を付けることはありませんでした。
「今年は全滅してしまいましたが、成功するまでやってみたいと思います。」
農家として、地域に住む住人として、土地を活用。そして地域を守る役割を引き受けています。
終わり
▼佐伯さんのりんごは、こちらから購入いただけます🍎
https://store.shopping.yahoo.co.jp/cjnaganofarm/100-1.html