林檎物語

林檎物語 | 2021.12.20 Mon
【GRAPPLE TAKADA】Issue03〜見えてきた農業への姿勢〜

食卓を彩る、りんご。ひとかじりすれば、甘酸っぱくて甘い、ジューシーなおいしさが、口いっぱいに広がります。

そんな、おいしさを生み出しているのは、ほかならぬ「りんご農家さん」。そんな農家さんの思いや、農業に対する哲学に、耳を傾けてみませんか?

りんごを愛して奮闘する、りんご農家さんのインタビューをお伝えしていきます。

きっと、りんごの見え方や味わいが、昨日とは変わるはず。

 

今回ご紹介する農家さんは、長野県南部の箕輪町で「GRAPPLE TAKADA」(グラップルタカダ)を運営する高田知行(たかだともゆき)さんです。東京でのサラリーマン生活を経て、2011年箕輪町に移住。りんごや自然を軸にした地域活動に力を入れながら、ぶどうとりんごを栽培してきました。「移住後は、家族と過ごす時間が増えた」と高田さんはしみじみ話します。

Issue03では高田さんの「見えてきた農業への姿勢」に迫ります。

台風被害を救った、地域活動のつながり

2019年の10月、収穫を控えるりんごの木々を襲ったのは、大型で非常に強い台風19号。高田さんの畑も大きな被害を受けました。

「ふじりんごの木が全部倒れてしまったんです。農協には、リンゴがまだ付いてるから、そのまま斜めでもいいから起こすことを提案されました。根っこが全部死んでなければ、なんとか収穫まで持っていけるかもよって。」

何とかしてみようと思いながらも、どうすればいいのか。被害状況をFacebookに投稿しました。すると、長野県内はもちろん山梨県や岐阜県から、りんご農家だけでなく飲食業や林業などに従事する方が集まったのです。

「本当に助かりました。今まで地域活動をしてきて関係を築いた方々を中心に、集まっていただき力になってもらいました。

ワイルドキャンプでお世話になった林業に従事する方からは、木を起こすための道具を提供してもらいました。当日朝早く作業前に届けてくれたので、一列ずつみんなでロープで引っ張って起こしていきました。

45度まで起こすことができたため、その年の収穫量は0にはなりませんでした。しかし、倒れた全ての木の根には、傷みが入ってしまい、傷から病気が入ってしまう懸念が残ります。冬の寒さに耐えられなくなり、そのうち倒れたり、抜けてしまったりと問題が出てきます。

「ものすごく悩みましたが、いったん木をゼロにして畑を作り直した方が早いんじゃないかという話になり、結局、全部倒すことにしました。その年は、絶望を味わいました。」

 

原点回帰へ

台風の被害は高田さんにとって、改めて家族への思いを見直す機会になったのだそう。当時は木が倒れたことから収入も下がり「家族の雰囲気も悪くなった」と高田さん。今回のことで分かったのが「家族が笑っているからこそ、頑張れる」ということです。

 

「地域活動をしてきた理由は、地域活動が好きだからでもありましたが、この地で同じ価値観の仲間を作るためです。仲間がいたからこそ、畑は息を吹き返しました。

 

逆に家族のことをずっと置いてけぼりにしてきたことに気づいて、反省したんです。」

 

家族との時間も大切にしたいと改めて感じた機会。移住した時に高田さんが真っ先に思ったことも、家族との時間がある素晴らしさでした。

 

「サラリーマンとして働いていた時は、帰宅時間が遅いのは毎日のこと。移住後は、夕飯を一緒に食べるようになりました。夜になったら作業はできませんから、どんなに忙しくてもそうなりますね。やっぱり、家族との時間はいいなって思いますよ。」

 

そして同時に芽生えたのが、もっと畑を極めていきたいという気持ち。今はコロナ禍によって地域活動がすべて停止したこともあり、畑への回帰をしています。

「畑のことをもっとちゃんと知りたいですね。そこに時間を割いていきたいです。消費者の方と、1年間にいろいろあったことを共有しながら、互いに喜び合えるような関係性を作りたいと思っていました。ワイルドキャンプを企画した理由には、そんな関係性の中でりんごを食べて欲しいという気持ちもありました。

そのためには、おいしいりんごを作らなくてはいけない。おいしいりんごを作るには、木が健康であることが一番の条件です。木がとにかく健康であれば、できあがったものはおいしいんです。それは人間が食べた時に、栄養素がたくさん入っていることを本能で分かるから。

私たち農家は、土壌の中にいる生物の活動をうまく利用して、畑環境を作る役割を担っています。農法はその畑に生きる生き物が教えてくれるもので、人が畑に何かを与える・与えないものではないと考えてます。」

栽培技術の勉強会にも参加し、植物や土壌、使う薬の本質を知ったうえでりんごに向き合います。

「“おいしい”の先に笑顔があり、人のつながりがある。そこを僕は大事にしたい。模索しながら、次のステップへ行きたいと感じています。」 

終わり

Tags & Keyword

LATEST

Tags & Keyword

yama