林檎物語

林檎物語 | 2021.12.20 Mon
【まつじるし農園】Issue01〜キャリアで変わった、りんごの届け方〜

食卓を彩る、りんご。ひとかじりすれば、甘酸っぱくて甘い、ジューシーなおいしさが、口いっぱいに広がります。

そんな、おいしさを生み出しているのは、ほかならぬ「りんご農家さん」。そんな農家さんの思いや、農業に対する哲学に、耳を傾けてみませんか?

りんごを愛して奮闘する、りんご農家さんのインタビューをお伝えしていきます。

きっと、りんごの見え方や味わいが、昨日とは変わるはず。

 

今回ご紹介する農家さんは、長野県北部の中野市で「まつじるし農園」を運営する松野 洋祐(まつのようすけ)さん。就農前には関東のお菓子屋でパティシエとして働いていました。「おいしいりんごは、そのままに食べる方がいいのではないか。」とりんごをお菓子にする役割から、育てる役割に移りました。

 

Issue01では松野さんの「キャリアで変わった、りんごの届け方」に迫ります。

おいしい果物を加工すること

「おいしい果物はお菓子にせず、そのまま食べた方がいいのではないか、そう思ってしまったんです。」

関東で展開するお菓子屋で、パティシエとして働いていた松野さん。果物をお菓子にする度に、疑問を感じることが増えました。

「食材を組み合わせてお菓子にすることが私の仕事でした。しかし、果物に砂糖や塩、レモン汁などを加えて味を付けることは『本来の果物のおいしさを本当に活かせているのだろうか』と、自分の仕事に疑問を抱いてしまったんです。」

10年間パティシエとして忙しく働き、周囲をゆっくり見られる余裕が出てきた頃だったのかもしれません。ふと立ち止まって、自身のキャリアを見つめ直しました。

「パティシエの仕事はやりがいもあり、自分の店を開く夢もありました。しかしお菓子屋だけでなく、コンビニスイーツも充実する世の中で、自分の店を出すことを現実的に捉えることが難しかったのです。

そして『おいしい果物が好き、育てたい』という気持ちがだんだんと大きくなり、果物農家に挑戦することを決意しました。」

栽培する果物は、子どもの頃、お父さまが単身赴任をしていて馴染みのあった長野県が産地であり、パティシエとして加工しやすかった、りんごを選びました。

2013年に横浜市から中野市へ移住し、農業法人で研修生として2年間過ごした後、りんご農家さんから栽培方法を教えてもらう期間を経て独立へ。2018年「まつじるし農園」を開きました。

 

過去と現在のキャリアが生み出す“りんごセット”

地域のりんご農家さんから引き継いだ畑は、総面積1ヘクタールほど。「ふじが、いちばんおいしいと感じています。」と言うように、畑の6割が ”ふじりんご” の品種です。

干しりんごや、りんごジュースも販売しています。ジュースは1リットルに、8~10玉ほどのりんごを絞った無添加100%ストレートの商品です。

また、干しりんごの販売を始めた理由は、コロナ禍において、毎年出店していたマルシェの中止や、道の駅への客足が減少し、在庫を抱えてしまったからです。りんごを低温で約24時間じっくり乾燥することで栄養や旨味も凝縮され、無添加のまま砂糖や塩を加えずとも、おいしく食べられます。

今後の目標は、これまで培ってきたパティシエの技術で、自分の手で育てたりんごをお菓子にして提供することです。

「生のりんごは、おいしいです。そのままでお届けしたい気持ちもある一方で、やっぱりパティシエとして生きてきたので、その技術を活かした商品を作りたいと思いました。

今考えているのは、タルトタタン。パイ生地の上に甘酸っぱく煮たりんごを乗せた、フランス発祥の焼き菓子です。自分の手で加工した焼き菓子と、そのままのりんごをセットにして、みなさんに届けたいです。」

 

Issue02に続く

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