林檎物語

林檎物語 | 2021.11.29 Mon
【瀨崎農園】Issue02〜届けたいりんご〜

食卓を彩る、りんご。ひとかじりすれば、甘酸っぱくて甘い、ジューシーなおいしさが、口いっぱいに広がります。そんな、おいしさを生み出しているのは、ほかならぬ「りんご農家さん」。そんな農家さんの思いや、農業に対する哲学に、耳を傾けてみませんか?

りんごを愛して奮闘する、りんご農家さんのインタビューをお伝えしていきます。

きっと、りんごの見え方や味わいが、昨日とは変わるはず。

今回ご紹介する農家さんは、長野県北部の山ノ内町で「瀨崎農園」を運営する瀨崎眞也(せざき・しんや)さん。農家になるまでは、京都市で主に人命を助ける救急救命士として勤務していましたが、2017年、51歳で長野県へ移住、農業大学校に通ったのち、翌年からりんご農家を始めました。

Issue02では瀨崎さんの「届けたいりんご」に迫ります。


お話上手のメディア出演

瀨崎さんは、異色の経歴のりんご農家として、メディアに出演することも多いのだそう。BSテレビ東京の番組に出演した時には、県外からのりんご注文の電話が殺到するという嬉しい反応もありました。

さらに地元では、FM善光寺に登場。一度取材を受けたときに”おしゃべり上手”と評判になり、毎月第3金曜日にレギュラー出演し、防災やりんごについて話しています。

「消防の仕事って多岐に渡ります。例えば単に火を消すだけじゃなくて、火災予防の呼びかけもするんです。人を引きつけるような啓発活動をしないといけないんですね。」

特に子供たちへの防災教育をするなかで、啓発ツールや、伝え方をいろいろ工夫してきたのだそう。その経験が、今につながっているようです。

「広報を通して、新規就農希望者がきた時に『おもろいことしている関西から来たおっさんがおるから聞いてごらん』って言ってもらえる立場になれたらと思いますね。」


現場の声を、直に聞く

りんごの作業がひと段落した冬季、瀨崎さんは近隣や関西のスーパーに勤めます。目的は、りんごの状況やバイヤーの動き、個人のお客さんの声など、現場の需要を知るためです。

「関西のスーパーで、お客さんから『お兄ちゃん見慣れん顔やけど』って声をかけられて、『実は長野でりんご農家していて勉強と出稼ぎで来てるんです』って言うたら、そこで情報交換が始まるんですよ。ダイレクトに個人のお客さんの声が生で入ってくるんですね。」

そこで瀨崎さんが感じたのは、小玉のりんごへの需要でした。

「相手がどんなものを望んでいるのかっちゅうのを、現場に入って声を拾ったら『そんな大きいりんごいらんねん』という声が多かった。私が大玉を作らない理由はそこなんですよ。」

流通の場では、りんごは大きい方が高値で取引される傾向があります。しかし、現場の声を聞いた瀨崎さんは、小玉のりんごで勝負することにしました。

「私は立派なものではなくて、みんなが手に取りやすいりんごを作りたいんですわ。スーパーで買いやすい低価格で提供したい。この値段でこの味なら、ご納得いただけると思いますよ。」

さらに瀬崎さんは”三方よし”を実践する農家を目指しています。売り手の都合だけではなく、買い手のことも考えた商売をすることで、地域社会への貢献するという、近江商人の考え方です。

「私は一人で生産もして、箱詰めもして、営業もしている。私を含めて、そのすべてに関わる方々が、値段や条件、そして品質のすべてに笑顔で納得できる農業をしたい。売り手よし、買い手よし、世間良し。それでみんなが繋がっていけたら、非常にいいんじゃないかなと思いますね。」

そんな瀨崎農園は、思いを伝えるロゴマークを作成しています。ロゴマークには、りんごに、炎の葉っぱがついています。

「炎は ”熱い思い” と ”元消防士が作っているりんご” であることを表します。生産者である私の熱い思いと、その思いを汲んでロゴの作製に携わっていただいた数多くのプロの方々の思いも込められています。時間と労力をかけて、丁寧に育てたりんごへの気持ちが乗り移って、お客さんに必ず伝わるはずです。」

Issue03につづく

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